銀行の実態
ドキュメント銀行 金融再編の20年史─1995-2015
前田 裕之 ディスカヴァー
下記が昭和の時代のエリート行員なのですね。
現実に銀行員は、
特別の存在になれるだけの社会的存在だった。
なにしろ資金不足の時代、
銀行が産業の中心にいないと社会が回らなかった。
それを監督する大蔵省は最強官庁だった。
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5年間のニューヨーク勤務を終えて帰国した國定はその後、新宿支店長、東京営業第三部長、東京企画部長などを務め、順調に出世していく。両親の生活も次第に安定し、國定の中で「影」の意識が薄れてしまう。部下には厳しく接し、返済が滞っている債務者には罵声を浴びせる。取引先からはちやほやされ、夜の宴席では当然のように上座に座る。その一方で監督官庁である大蔵省や日銀には平身低頭し、当局との窓口となる東京企画部長のときには、接待攻勢をかけた。といっても、当局との接待を任されるのは、銀行内では一握りの人間であり、その場に居合わせることはエリートの証しでもあった。
こうした生活を送る中で、自分が特別な存在であるかのように錯覚し、ごう慢で鼻持ちならない人間になったという。この自画像は、程度の差こそあれエリート銀行員の典型的な姿だったといえる。