銀行の実態2

 ドキュメント銀行 金融再編の20年史─1995-2015
 前田 裕之 ディスカヴァー

 なんと、
 三菱東京UFJは逆ざやなのですね。
 人件費まで考慮しての営業利益レベルですが。

 1兆円の利益は海外での融資と、
 証券の仲介業による手数料。

 いや、UFJ銀行を取り込んだことが影響しているのだろうか。三井住友は利ざやを確保している。

 本業の預金調達した資金の貸付で利益が出ていない。

 すでに逆ざや状態なのだから、
 今さらマイナス金利にしたところで何の効果もないだろう。

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 2015年3月期で比べると、三菱東京UFJ銀行は資金運用利回りが0.65%、資金調達原価が0.72%で総資金利ぎやはマイナス0.06%の「逆ざや」で前の年度より0.03ポイント悪化した。一方、三井住友銀行は資金運用利回りが1.31%、資金調達原価が0.79%で総資金利ざやは0.5%。前の期に比べ0.08ポイント改善している。ちなみに、みずほ銀行の総資金利、さやはマイナス0.07%で、前の期に比べ0.06ポイント悪化した。

 デフレ経済からの脱却を目指す日銀が黒田東彦総裁のもとで異次元金融緩和を打ち出したのは2013年4月。日銀が市場に出回っている国債を購入するなどの方法でお金を大量に供給すれば市中金利が低下し、企業や個人が銀行からお金を借りやすくなるとの触れ込みだ。

 ところが、もともと市中金利は最低の水準にあり、貸し出しの伸びには必ずしもつながっていない。貸出業務による収益が低迷し、銀行にとって貸出業務はますます「もうけづらい」ビジネスになっているのだ。

 なぜ、三菱UFJは総資金利ざやがマイナスなのだろうか。『週刊東洋経済』(2014年11月8日号)は特集でこの問題を扱っている。同誌によると、逆ざやの原因は主に3つ。

 1つ目は東海地区と関西地区での融資競争だ。三菱東京UFJ銀行の母体は、東京が地盤の東京三菱銀行、大阪が地盤の三和銀行、東海が地盤の東海銀行。3メガの中では経営統合が最も遅かったため、統合作業に追われるうちに他の金融機関の攻勢を受け、貸し出しを奪われる事例が目立った。経営統合に伴う営業力の弱まりを補おうと2011年頃から大阪や東海などで逆に競争をしかけ、結果として貸出金利が下がったという。

 2つ目は住宅ローン金利の低下。メガバンクに限らず銀行界全体で金利引き下げ競争が過熱する中で、三菱UFJも競争に巻き込まれた。

 3つめの理由が資金調達原価(コスト)の上昇。資金調達原価は預金金利や外部負債利回りに経費率を足して計算する。三菱UFJは他の2グループより人件費の負担が重く、経費率を押し上げていると同誌は指摘する。

 2014年下期の三菱UFJの業務粗利益(海外事業を除く)のうち、貸出業務の占める割合は法人部門で約25%、個人部門では約11%にとどまる。法人部門ではシンジケートローンやデリパティブ取引、証券業務など、個人部門では投資信託や株式・債券の販売手数料などの比重が増している。国内事業では、預金・貸出業務による利ざや収入が低迷している代わりに、証券関連の手数料入が伸びているのだ。