2010-01-01から1年間の記事一覧

遺産税方式への改正

現在の相続税の計算構造は、遺産をもらう人の担税力を考慮する方式を採用しています。 相続で労せず遺産が手に入った。そこに税負担を求めよう、しかし、残された遺族の生活保障も考え、特例も認めよう、そのような趣旨です。 民主党は以前より遺産税への変…

官僚主導の税制改正

政治主導を掲げる民主党ですが、今回の税制改正はどうみても官僚主導。長年財務省が温めてきたと思われるかなりの項目が、実施されたように受け止めました。 政治家を利用し、あるいははぐらかし、結果として所得税にまで手をつけました。あるいは、民主党内…

税制改正大綱

日経新聞をはじめとして、「理念なき増税」「高所得者に負担を押しつけるのはおかしい」「消費増税先送りの帳尻あわせ」と批判ばかりですが。 消費税を増税すれば、財政問題は解決すると思っている時点で日経新聞は根本的に間違ってます。消費税を10%に増…

読書35 イギリス近代史講義

イギリス近代史講義 川北稔 講談社現代新書 産業革命は、生産の革命と思われているが労働者が禁欲主義で幾ら働いても産業革命は起こりえなかった。需要・消費の爆発的な増加が必要だ。 イギリスでは、14歳になればよその家へ奉公へ出る習慣があった。10…

読書34 悪名の棺

悪名の棺 笹川良一伝 工藤美代子 幻冬舎 笹川良一といえば、日本の黒幕、フィクサーと言われていますが、私の世代は、「世界は一家、人類皆兄弟」のCMでおなじみの好々爺というイメージしかありません。 著者の思い入れもあるのかもしれませんが、生涯を福…

オリジナリティ

専門家はオリジナリティが必要です。税理士のオリジナリティには、どんな種類があるのか考えてみました。 1 誰も知らない通達や質疑応答を知っている。 2 難解な条文を執念で解読している。 3 専門領域をもっている。 4 誰でも知ってる知識を誰も気付か…

自分は触媒

自己啓発本というのは、成功する人の考え方や生い立ちと結果との間には因果関係があるから、自分を変えれば成功できるということを書いているわけですが、個人的にはそのような本は読む気になれません。 決断力とリーダーシップがあっても人生に失敗した人は…

IFRSの思想

IFRSは、貸借対照表を時価評価した企業の売却価値を開示することを目的にしています。利益は、純資産の差額である包括利益。つまりどのような経緯で利益が発生したかという歴史を問わないわけです。それを明らかにするのが損益計算書でした。そんなのは…

税理士の知識の価値

法人税率は引き下げの方向ですが、扶養控除の廃止、配偶者控除の縮小、相続税の基礎控除引き下げ、給与所得控除の上限制度など、全体としては、増税の気配です。将来は、消費税率もアップするでしょう。 税理士業務の視点で考えると、税率が2倍になれば、節…

読書33 行動経済学

行動経済学 依田高典(京都大学教授)中央公論新社刊 経済学は、物理学に引け目を感じ、数理を用いた理論を取り入れてきた。ところが、数理経済学で構築した理論は、実際の人間の不合理な行動には当てはまらない。人間には感情があるからだ。ときには、損だ…

読書32 公共事業が日本を救う

公共事業が日本を救う 藤井聡(大学教授 土木計画学)文春新書 必要な公共事業が行われていないことは、土木計画の専門家からみれば、日本の危機でしかない。今すぐ崩壊してもおかしくない橋や、大地震に耐えられないことが明らかな脆弱な都市インフラ。 し…

読書31 物理学と神

物理学と神 池内了 集英社新書 デカルト以来、自然科学者は、与えられた物質や定数から、反応や法則を明らかにすることを仕事としてきた。要する与えられた摂理を追求するのであって、なぜその法則が存在するのかという目的を研究することは研究対象外だった…

読書30 「感情の整理」が上手い人下手な人

「感情の整理」が上手い人下手な人 和田秀樹(精神科医) 新構社ワイド新書 感情のなかでも一番やっかいなのが、「不機嫌」。周りの人間からすると何に不満なのかわからない。不満ならいってくれればいいのにとなるのだが、そもそも本人にも何が不満なのかわ…

読書29 田中角栄の昭和

田中角栄の昭和 保阪正康 朝日新聞出版 田中角栄はどう歴史に位置づけられるのか、というテーマなのですが、田中角栄を描くということは昭和そのものを辿ることにほかなりません。 その意味では、田中角栄いう政治家は、日本が一度は通過しなければならなか…

読書28 国際会計基準はどこへ行くのか

国際会計基準はどこへ行くのか 田中弘(神奈川大学教授)時事通信社 時価会計には一貫して批判的な立場のようだ。「嫌い」という視点で論じられている面もあり、そこは割り引く必要がある。 著者によれば、時価会計は、失敗の歴史だったと。1920年代の世…

読書27 脳は利他的にふるまいたがる

脳は利他的にふるまいたがる 村井俊哉 PHP研究所 脳が満足や興奮を覚えたときにはドパミンという神経伝達物質が報酬として分泌されることが知られている。では、報酬だけが人間の行動を決めるのか。 もちろんそうではない。人間は自分の得なことだけをす…

読書26 移行期的混乱

移行期的混乱 平川克美 ちくま書房 デフレ克服、社会保障問題、すべてを解決するのは経済成長か。経済成長がないのは政府の無策が原因か。 違うというのが本書です。 P141あたりの、成長戦略がないのが問題なのではない。成長しなくてもやっていける戦略…

法人税率引き下げは必要か

法人税率の引き下げは本当に必要でしょうか。 引き下げ肯定論としては、外資系企業が日本に進出するようになり雇用が増える、税負担軽減で資金が増え、設備投資が活発化する、しいては日本のGDP押し上げ効果があるという。 結論としては法人税率を引き下…

読書25 まぐれ

まぐれ ナシーム・ニコラス・タレブ(数理系トレーダー) ダイヤモンド社 著者は世界で最も有名な現役トレーダーだが、訳者後書きによると異形のトレーダーだそうだ。わずかな損が出続けるようなポジションを取り、いつもストレスと戦い、周りのスタッフに励…

読書24 40歳の教科書

40歳の教科書 講談社 大西泰斗ほか 16歳の教科書は、高校生向けでしたが、今回は、16歳の子を持つ親へのメ ッセージです。 税理士として専門分野をどうすれば見つけられるのか。 自分でこれだ、と決めつけてしまうものではないのですね。 そういえば、…

現状は複雑、結論は単純

世の中、複雑に見えても理屈は単純です。しかし、そのためには、現状のあらゆる可能性と情報を矛盾なく整理し、位置づけなければなりません。 しかしたいていの人は逆で、置かれた現状を単純視してしまい、結果を複雑にしてしまいます。 税金もそうです。 あ…

読書23 通貨で読み解く世界経済

通貨で読み解く世界経済 小林正宏・中林伸一 中央公論新社刊 現在の85円前後の円相場は、15年ぶりの円高水準にあるといわれますが、物価水準を考慮すると実質的には、130円前後と推計されるということです。つまり、95年当時に比べれば、まだ円安で…

民主党総裁選

なぜ小沢さんが、民主党総裁選に出馬するのか理解できませんでした。やはり不利は否めない。負ければ、今度こそ民主党内での力もなくなってしまうのに、と思ったからです。 しかし、僅差で負ければ、逆に改めて党内での影響力を示すことができるというのが小…

読書22 知らないではすまされないマネジメントのためのIFRS

知らないではすまされない マネジメントのためのIFRS 中島康晴(新日本監査法人) 日本経済新聞社 IFRSは、デューデリ会計なのだそうです。 つまり、企業買収を前提にデューデリをするとしたら。 資産負債の価値を確定させ、営業利益からDCFで、…

読書21 連結納税制度導入の有利・不利判定

連結納税制度の有利・不利判定 佐藤信佑 中央経済社 組織再編税制、連結納税のスペシャリストといえばこの人。 完全な知識と実務経験がある人の専門書は読みやすい。 連結納税は、本書のように導入する場合としない場合や、組織再編を選択した場合の比較で学…

読書20 あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの

あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの 菅伸子(菅首相の妻)幻冬舎新書 妻の目から見た菅首相の素顔を紹介しています。 理系出身の現実主義者で知られる菅首相だが、妻の伸子氏もかなりの現実主義者。そうでなければ政治家の妻はつとまらないの…

読書19 かのこちゃんとマドレーヌ婦人

かのこちゃんとマドレーヌ婦人 万城目学 ちくまプリマー新書 小学1年生の女の子かのこちゃんと、猫のマドレーヌ婦人の物語。 読み始めるとすぐに子供の頃の自分に戻り、作品の世界に入り込めました。 人間の言葉と犬の言葉を理解できるマドレーヌ婦人。気品…

読書18 国際会計基準戦争 完結編

国際会計基準戦争 完結編 磯山友幸 日経BP社 会計基準は、その国の地域性、文化、慣習、企業風土にあわせたものが適切であり、国によって異なっていても国際的に尊重すべきという考え方には一理あると思う。 しかし、国際的に会計基準を統一しようという流…

消費税発言が唐突

参院選の民主党大敗の理由は、首相の消費税発言が唐突だったからだ−− 民主党はそう総括しているようです。 世論もそのように受け止めるのは、かえって民主党に都合のよいものでしょう。 発言の唐突さのせいにしてしまえば、説明の仕方がまずかっただけだから…

消費税増税

消費税の増税に関しては、各種の調査で、だいたい、半分ぐらいの人が増税に賛成しているみたいです。 これはすごいと思います。 普通、会社の業績が悪くても、「俺の給料を減らして会社の資金繰りを改善してほしい」なんていうサラリーマンはいないでしょう。…