読書25 まぐれ

まぐれ
ナシーム・ニコラス・タレブ(数理系トレーダー) ダイヤモンド社
 著者は世界で最も有名な現役トレーダーだが、訳者後書きによると異形のトレーダーだそうだ。わずかな損が出続けるようなポジションを取り、いつもストレスと戦い、周りのスタッフに励まされているという。しかし経済危機の際には過去の損を遙かに上回る莫大な利益を上げるという。
 投資のうち、8回損して2回儲かった。普通は損した気分になる。しかし、8回の損失トータルが10万円で、儲けた2回の利益が100万円だったらどうだろう。つまり何勝何敗かが重要なのではない。リスクの予測には、(失敗する)回数よりも(失敗したときの)量の方が重要だ。しかし、人間感情からは自由になれない。
 さらに感情だけの問題ではない。リスクの予測には、確率が重要なわけだが、そもそも実は人間は確率で思考するようにはできていない。たとえば、日曜日に海で泳ぐか、登山をするか迷ったとき、28%の確率で海へ行き、72%の確率で山へ行くという想像ができるだろうか。
 ではどうすればよいのか。
 ダイエットでチョコレートを食べないでおこうと思えば、チョコの箱を置かないことだ。