悪い税理士のすすめ

 悪い税理士になろう。

 

 と言っても現実に悪徳税理士になれというわけではなく、意地の悪い節税手法などを考えることは必要ということだ。最近では最高裁判決が出たタワマン節税が話題になった。こういった限界事例や非常識事例を考えることは常識的な処理の射程を把握するのに必要なのだ。

 

 勉強や仲間との議論では、税法の不備をつく、通達の盲点をつく、非常識事例を並べる。まじめなだけではアイデアは浮かばない。頭を柔軟にし発想を豊かにしておかないと何も思いつかない。正常な処理の輪郭が見えてこそ間違いのない判断ができるようになる。あるべき正しい処理の範囲が明確に理解できるということは、立法趣旨を理解することに繋がる。

 

 ただ、研修会や雑誌の原稿、書籍では思いついた節税手法は書きずらい面がある。とくに現行法で否認されていない手法だったり、税制改正の対応が難しい手法を書いてしまうと、筋の悪い節税を宣伝しようとしているのではないかと思われる不安があるからだ。

 

 こうした節税手法の議論を嫌ったり、興味のない真面目な税理士がいるが、そのような人ほど気づかぬうちに危険な処理をしていることが少なくない。悪いことを考えていない分、他人の悪意が見えてないのだ。良からぬことを考える人間に乗せられて危ない申告をしてしまっている。

 

 税理士は立法趣旨など考える必要はなく与えられた情報だけを元に実務をこなせばよい、そのような考え方では安全な範囲の処理が把握できない。シロの仕事しかしておらず、グレーゾーンを避けているから、目の前の実務が危険なダークグレーなのか安全なライトグレーなのかが判断できない。

 

 勉強の上では税法の盲点を突く意地悪な税理士になり、実務では清く正しく。これが税理士のあるべき姿勢だ。