読書31 物理学と神

物理学と神
池内了 集英社新書
 デカルト以来、自然科学者は、与えられた物質や定数から、反応や法則を明らかにすることを仕事としてきた。要する与えられた摂理を追求するのであって、なぜその法則が存在するのかという目的を研究することは研究対象外だった。それは、宗教や哲学の領域だと。
 宇宙の年齢が130億歳であることを計算で明らかにすることはあっても、なぜ130億歳なのかを気にすることはない。光の速さが計算できても、なぜこの早さなのかは気にすることもない。ところが、最近この領域にまで、踏み込む科学者が現れ始めた。
 自然科学の歴史は、神を取り込んだり遠ざけたりしながら、ときには神を利用し、発展してきた。しかし、なぜ宇宙は存在するのかという、神の領域にまで、科学が踏み込んだことで、宇宙は人間のために存在するなどという不届きな科学者も存在するようになった。そうでないという証明がなされない限り何でもありなのが、自然科学の世界。