読書34 悪名の棺

 悪名の棺 笹川良一
 工藤美代子 幻冬舎
 笹川良一といえば、日本の黒幕、フィクサーと言われていますが、私の世代は、「世界は一家、人類皆兄弟」のCMでおなじみの好々爺というイメージしかありません。
 著者の思い入れもあるのかもしれませんが、生涯を福祉と恋情のみに生きたウソのような人生です。ウソのようなというのは、死ぬまで人生を疾走し続けたエネルギーがですが。
 動かす数千億円の資金は、すべて納税後の資金、個人では温泉旅行にすら行かず、最晩年までメザシが大好物、自宅も傾いた中古住宅だったとのことです。
 「田中角栄の昭和」という本も読みましたが、2人に共通点は多いものの、死ぬ瞬間まで敵だらけのなか、自分自身の身を守りつづける強さと術を身につけていた点が違うと感じました。部下の背信も、進歩的文化人やマスコミからの執拗な攻撃も気にもとめていなかったといいます。というより、策を弄せず無視することが身を守る術であることを知っていたのでしょう。
 小沢さんは、こういった人たちと同じ価値観を持っているのでしょうね。同じことをしたから失敗したのか、同じことをしようとしてできなかったのか。たぶんその両方なのでしょう。