読書29 田中角栄の昭和
田中角栄の昭和
保阪正康 朝日新聞出版
田中角栄はどう歴史に位置づけられるのか、というテーマなのですが、田中角栄を描くということは昭和そのものを辿ることにほかなりません。
その意味では、田中角栄いう政治家は、日本が一度は通過しなければならなかった道だったというわけですが、これは、現在の民主党政権も同じでしょう。
歴史的には、、素人政治のような現在の混乱も、時代の転換のためには必要なことなのでしょう。
P199
田中はその体質において、日本の共同体社会(農村自治体)の凝縮そのものである。ここでは義理とか人情といった、いわば人間関係の紐帯を軸にしての利害関係が成りたつのだが、田中はそれを心底から信じていた政治家でもあった。
P377
このような人物を首相にもった時代は、この時代の人びとすべてがやがて歴史的批判の対象になるというのも仕方がないように思える。たぶん田中のもつ物量肥大主義、信念・理念なき儲け主義は、昭和という時代にあってはいちど通過しなければならない道であったのだろう。