読書18 国際会計基準戦争 完結編

国際会計基準戦争 完結編
磯山友幸 日経BP社

 会計基準は、その国の地域性、文化、慣習、企業風土にあわせたものが適切であり、国によって異なっていても国際的に尊重すべきという考え方には一理あると思う。
 しかし、国際的に会計基準を統一しようという流れをいまさら変えるのはムリだろう。
 国際的に活動する上場企業にとり、会計基準という「モノサシ」は、企業の命運をも左右する。企業が海外へ投資するには、どの国でも同じモノサシを使い、投資効率を把握する必要があるし、他国が適切でないモノサシを使い、会社を実力以上に良い会社と見せかけるような独自の会計基準を使っている場合には、抜け駆けを許さないという国際的圧力が働く。
 時価主義会計導入のヘゲモニーをめぐる世界の動きに対し、日本は、取得原価主義による含み益経営にこだわった。逆にリーマンショックが起きると含み損実現の先送りをもくろんだ。なにしろ会計基準設定主体(企業会計審議会)は事実上財務省が牛耳っていた。
 欧米からすれば、日本は本来の実力以上に会社を立派にみせかけているのに他ならない。
 財務省は、IFRS受入には最後まで難色を示し、さらには、受入を表明してからも、なし崩し的に受け入れることで抵抗した。財務省の目論見は、日本基準を国際会計基準と同等のものであると国際的に認めてもらうことだった。
 IFRSの全面適用を目指す国際派会計士と財務省会計基準設定主体をめぐる駆け引きを中心に描かれている。