読書メモ87 青山常運歩

 青山常運歩 毎日新聞社
 中曽根康弘対談集

 タイトルは、仏教の教えを示すことばです。変化がないように見える山も季節の移ろいの中で身を整え躍動している。それに気付くことと、自らの錬磨の尊さを説くもの。

 小沢一郎氏など的確に言い表していると思う。
 渡辺恒雄氏は好きではないが、話す内容はもっとも。納得できます。

 対話はお互いのレベルが必要ですね。相手のレベルが低いとそれに合わせざるを得ない。レベルの低い人がレベルを上げるのは不可能だからです。

 P177
 渡辺恒雄 衆参のねじれによる政治の停滞を解消するため、組閣をどうするかということを話しあった。多少の齟齬があって失敗しました。小沢さんは党内の反発などさきを見誤ったところもあった。ただあの大連立が成功していれば、消費税アップが実現し、社会保障の財源の問題は解消していたでしょう。僕は大連立をやれば、大衆に迎合しないで選挙をやれると考えたのです。

 P179
 渡辺恒行 政治を堕落させているのはテレビ。小泉さんが悪かったね。劇場型テレビ政治を初めて、皆がそれをまねした。政治家がちょんまげを結って道化役者に成り下がってでもテレビに出て大衆に知られようとしている。この堕落、知性の欠如、無教養、話にならんね。インターネットは猥雑な情報が多いし、ツイッターのような断片的なもので体系的な思想が表現できるわけがない。新聞が頑張らなきゃいかんと思っていますよ。今こそ新聞が体系的な言葉で政治を伝えなければならない。

 P209
 中曽根 「投網」答弁に沿って大蔵省(当時)に検討させたら、もってきた案は欧州型の付加価値税でした。「大蔵省は政治家殺し」ということを思い出しました。大平正芳君(元首相)はこれを鵜呑みにして79年、衆院選で一敗地にまみれたわけです。私は「君らに殺されないよ。中小企業や低所得者に配慮した『日本型』の消費税を作れ」と命じました。それが売上税となったのですが、相当な反発がありましたね。日々の食料の値段が高くなって生活が立ち行かなくなる、家計に手を突っ込まれるというような印象を国民に持たれてしまい、相当苦労しました。当時、そういう点には十分配慮しているんですよといくら言っても聞いてもらえなかった。
 
 P285
 中曽根 小沢君は「豪腕」などとモンスターのように過大に評価されている。本当は東北人特有の粘り強い根性を持つ地味な政治家です。権力志向は強いが、日本の国際的立場をどう確保するかなど体系だった夢があるように見えない。小沢君は沈黙して行動を隠すことで「何か仕掛けるのでは」と憶測を生み、自分を実像以上に見せかけている。これは金丸信元副総裁が得意とした手法です。

 P321
 中曽根 そうですね。大阪や愛知で起きた現象は、「有力な地方政治家」が誕生したということです。国政の場で内政と外政を担える見識のある政治家を生んだ選挙ではありません。あの人たちがすぐ国政に鞍替えしても、中央では動きが取れないでしょう。なぜなら、外交政策や国家戦略を打ち立てたり、野党とどう調整するかということはできないだろうからです。