読書22 知らないではすまされないマネジメントのためのIFRS

 知らないではすまされない
 マネジメントのためのIFRS
 中島康晴(新日本監査法人) 日本経済新聞社

 IFRSは、デューデリ会計なのだそうです。 
 つまり、企業買収を前提にデューデリをするとしたら。
 資産負債の価値を確定させ、営業利益からDCFで、のれんを算定する。
 これを毎期行いなさい、というのがIFRSなのだそうです。 
 企業買収で大事なのは、純資産と将来キャッシュフロー。過去の経常利益はどうでもよく、包括利益すら本来不要で、PLとBSを繋げるためにあるだけ。 
 こう考えると、のれんの非償却も理解できる。第1年度の事業価値100+のれん50=150とすると。
 IFRSでは、毎期、この価値が妥当かどうかデューデリを行うための基準。
 この価値を維持できていれば、償却は不要。もし、120になっていれば、即30を減損する。つまり、その後の収益とのれん償却費を対応させるという損益思想はない。 
 IFRSとは、経営の実績・目標を管理するための基準ではなく、投資家が見て、会社が今、M&Aに巻き込まれたらいくらの価値があるのかを報告するための基準。 
 ただ、なぜこのような制度をヨーロッパが導入しようとしているのかの説明がほしかった。 
 ちなみに、連結のみを想定している制度であるため、個別財務諸表にIFRSを適用することはあり得ず、税務への影響は意外と少ないかも知れません。 
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 もちろん、個別財務諸表のIFRS化というのもあり得ないと考えている。(減価償却費などの)損金経理要件の見直しも考えられるところだが、実はこの仕組みは非常によくできている。税務上の所得と、会計上の利益に対する経営者のインセンティブが、逆ベクトルになっているところをうまくついた仕組みである。日本企業に対する財務上のガバナンスとして機能しているとも言える。個別財務諸表にIFRSを導入するために、この優れた仕組みを放棄するのでは、日本の戦略性を疑ってしまう。