読書27 脳は利他的にふるまいたがる

脳は利他的にふるまいたがる
村井俊哉 PHP研究所
 脳が満足や興奮を覚えたときにはドパミンという神経伝達物質が報酬として分泌されることが知られている。では、報酬だけが人間の行動を決めるのか。
 もちろんそうではない。人間は自分の得なことだけをするわけではなく、場合によっては、自分の得を犠牲にしてでも、他人に得させまいと行動することがある。それが、有名な最後通牒ゲームという実験だ。
 逆に、自分が損をしてでも、他人の役に立とうとすることもある。
 なぜそのような、不合理な行動を行うのか。
 人間には、他人の感情を自分の感情にする能力がある。脳科学的には、他人が悲しんでいるときには、自分の脳でも悲しみに関係する脳部分が活動することが知られている。それを行うのがミラーニューロンだ。
 つまり、人間の脳は、他人の脳との繋がりを前提として、存在しているわけだ。利己的な人間が最後には敗北するのは、生物学的にも正しいのだ。