昔の実務書

 書籍を執筆していると、
 「たくさん実務書を読んでいるのでしょうね」
 と言われますが。
 私の場合、税法書籍を読むことはゼロです。

 書棚を整理していたら下記の書が。
 なんと、昔は大蔵事務次官が税法書籍を執筆していたのだ。

 どうしてこのような書籍が消滅したのだろうか。
 今、自分を宣伝する軽い内容のものばかり。

 法人・個人をめぐる借地権の税務
 高木文雄 清文社

 読み応えがありそうだ。
 読んでみよう。

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 課税官庁の介入は、課税権の行使の形で表現される。極めて権力的な形
で表現される。
 関係納税者からみれば、一種の圧力を受けることとなる。これに不服あ
る者は、課税官庁を相手として訴訟で争うほかなくなる。国の権力に抑圧
されたひ弱な納税者が強大な力を持つ国を相手に訴訟を提起して法廷で争
うとき、現行法上は、民事訴訟の形式を取る。

 その場合にも、何故国が強大な権限を行使したかということについて、
財源調達の目的で、すなわちいわば取り主義の下に権限行使が行われたと
多くの人、例えばジャーナリスト・グループなどからみられがちである現
状を私ははなはだ残念に思う。

 くどいようだが、繰返して述べる。申告納税が現行税制の基礎である。
その場合、申告をする納税者は、他の納税者もまた自分と同じく正しく申
告するものとの信頼がある。この信頼は、もし正しくない申告が行われた
ならば、課税官庁が見逃しておかないであろうという期待によって担保さ
れている。この担保があって初めて、申告が進行する。従って課税官庁は、
財源調達を直接の目的とするだけではなく、むしろ一般の納税者の信頼に
応えるべく、課税権を行使するという仕組みである。

 従って、法廷で民事訴訟手続の下に進められる裁判の一方の当事者であ
る課税官庁は、背後に他の一般納税者の信頼を受けている認識に立ってい
る。これが税務訴訟における課税官庁の立場である。

 著者経歴
 昭和18年 東京大学法学部卒
     大蔵省入省
 昭和19年 第十方面艦隊軍法会議法務官
 昭和35年 国税庁徴収部管理課長
 昭和36年 国税庁直税部法人税課長
 昭和37年 国税庁直税部審理課長
 昭和41年 大阪国税局長
 昭和43年 東京国税局長
 昭和44年 大蔵省大臣官房審議官
 昭和45年 大蔵省官房長
 昭和46年 大蔵省主税局長
 昭和49年 大蔵事務次官
 昭和51年 日本国有鉄道総裁
 昭和58年 退任 現在弁護士