読書メモ56 なぜ日本の政治はここまで堕落したのか

なぜ日本の政治はここまで堕落したのか
榊原英資 朝日新聞出版
 江戸時代の地方分権の流れが今の政治の原型です。
 地元の武士と名士が庶民の事情を酌み分け、草の根レベルで地域を掌握していた。それが自民党族議員の源流。
 一方で明治政府はエリート高級官僚による統治機構を完成させた。
 これが融和し機能していたのが90年代までの自民党支配です。国の方向性を財務省が誘導し、草の根レベルの地域掌握を政治家が担う。
 さて、これが今どう変化し、政治の低迷に繋がっているのでしょうか。これが以下の本書の主題です。
 官僚と政治が分離しているのが、今の状況だ。日本の民主主義は選挙を聖域視しすぎた。これが政治のプロでなく、選挙のプロを生み出した。そして民主党の政治主導が政治家を強くし、官僚と政治の分離をさらに広げた。
 現在の閣僚はほとんどが民間、行政を経験しないまま若くして政治家になった人物がほとんどだ。政治家の経験しかない政治家が多い。
 するとどうなるか。政治家は官僚を手足として使う力量は到底望めず、官僚は、政治家に影響力を行使できない。
 つまりは、素人のような政治家が力を持ちすぎたがための機能不全が今の状況だと。
 政治家しかやったことがない政治家ほど使い物にならないものはない。
 一方、官僚は徹底したエリート教育で育て上げるべきだ。
 民主党はたしかに自民党時代の行政機能を壊した。しかしこれに変わるシステムを何も生み出していない。