読書10 同族会社の株式対策

同族会社の株式対策<改訂版>
西浦康邦 清文社
 勤務時代にはじめて非上場株対策を勉強したのがこの本でした。改訂版がでていたので手に取ってみました。
 はしがきに「筆者の能力では、到底そのすべてについて理解を深めることはできず、網羅的に解説することはかないません。筆者にできることがあるとすれば、長年の経験を活かしてアイデアを出すことと、わかりやすく書くことです。」とあるように、条文を逐条的に解説した書籍ではありませんが、条文を引用することなく、自身のことばで語るスタイルは、これから事業承継税制を勉強せねば、と考えている税理士・経営者向けだと思います。
 たとえば、自社株納税猶予制度は、同族会社に限り、事実上生前に相続人への財産の処分を可能にしてしまう制度なのですが、それについて言及している書籍は、ほかに見あたりません。
P85
「 以上の状態をみてみると、結局、Aさんは自分の目の黒いうちに、贈与の形で相続させたことになります。Aさんは、ご自身の意思に従って、自社株式を早目にBさんに贈与し、Bさんが経営者として一人前になるのを見守り、自分が亡くなったときにはすでに自社株式の相続が終わっているという形になっています。生前贈与すればこれと同じなのですが、贈与では多額の贈与税がかかり現実問題としては不可能です。しかし、贈与税の納税猶予を使えばこれと同様なことができるようになったのです。
 これこそ生前相続ではありませんか。」