読書12 それでも日本人は「戦争」を選んだ

それでも日本人は「戦争」を選んだ
加藤陽子(東大教授)朝日出版社
 歴史上の事件と事件の因果関係をみるとき、あるいはそこから得られる教訓を現代社会に当てはめてみるとき、研究者は内気で控えめでなければならないと著者は言います。それは、史料を公平に、かつ多角度から分析する必要があるということなのでしょう。
 一部の政治家の行動だけで国家が戦争に突入することなどあり得ない、ではなぜ国民が開戦を望み、賢明な政治家までが戦争しかないと思うに至ったのか。それを中高生に向けて語った企画を書籍にまとめたものです。
 国のシステムが硬直化して変革ができないとき、国民に見せてはならない夢を見せ、国民の支持を得ようとする動きが必ず表れる。それが昭和戦前期の陸軍であり関東軍だった。これは現在の民主党に似ている。
 政治家の権力争いと戦争の莫大な財源の調達をめぐり、政治家がどう動いたのか、国民の支持をどうやって得ようとしたのか、細部に切り込む説明が面白い。
 侵略・被侵略の物語では、歴史はかえって見えなくなる。日本と中国の場合は、経済権益の確保、国際社会での競い合いの文脈で眺めれば、過去の日中関係が語れるといいます。大事なのは視点なのだなと改めて思いました。
 さて、現在の政界図は、どのような視点で見ればよいのか。少なくともマニフェスト事業仕分けではないでしょう。