読書50 百姓たちの幕末維新

百姓たちの幕末維新
渡辺尚志 草思社
 30年間、江戸時代の村と百姓を研究してきた著者が語ります。
 不作で年貢が納められない百姓が、農地を担保に借金をするとする。結局返済できず、質流れになっても、元金さえ準備すれば取り戻すことができる無年季的質地請戻し慣行という慣行があった。たとえ何10年経っていても、農地を取り戻せるわけです。
 もちろんこんな法律はなく、すべては百姓の保護や、お互いに家を守るための慣行だったわけです。また、百姓にとって農地と農業はそれほどの守るべき財産でした。
 問題が起こるのは、大不作の時。年貢の滞納がおこると、実際の所有者と農地の利用者が異なるのですから、利害関係に不均衡が生じます。
 役所も解決に乗り出しますが、解決は不能。幕府に強制的に解決できる力はありませんでした。結局誰にも解決できず先送りです。
 地主や債権者、役人に不満を募らせ、百姓一揆が起こる。しかし、死者はでません。放火や家財の略奪はありますが、デモのようなものです。実は百姓一揆とは、社会制度や特定の役人などに対する抗議行動だったのです。
 現代の日本人そのままに見えます。
 皆が損をしないようにとの長年の慣行が、しがらみを作り、お互いに遠慮し、問題を先送りする。
 しかし、土地の所有関係も解決しました。地租改正です。役人、地主、百姓が個別に所有関係と滞納の年貢の問題を解消しました。
 そうと決まってしまえば、仕方がないと全員が協力し解決することができる。
 これも日本人のもつ、DNAだと私は楽観してます。