読書メモ55 金融動乱 金融庁長官の独白

金融動乱 金融庁長官の独白
五味廣文(元金融庁長官) 日本経済新聞社出版
 元金融庁長官が長銀日債銀の破綻処理、UFJ銀の検査忌避問題、りそな銀行の一時国有化を語ります。
 あの時の経済情勢ではやむを得なかった、当時の法整備ではあれが限界だった。結果論では何とでも言える。このような言説が並びます。
 もちろん、官僚として国のため真摯に業務を行っていたのでしょうし、間違った行政処分など絶対できない。書いてあることはウソではないと思います。また、官僚全員を画一的に評価するのは過大評価だと思います。一官僚にできることは限られるはずです。
 ただ、検査を受けた銀行側の手記も読んでみたいと思いました。
P104
 今から振り返っても、なぜ監査法人からりそなグループの経営陣に、もっと早い段階で警告が出されなかったのか見当がつかない。金融庁としては監査法人が適切に対応しているという前提で銀行の経営を監視している。りそなのケースは、れっきとした大手銀行に対して監査法人が繰り延べ税金資産の大幅な減額を迫った初めての経験だったが、そのこと自体に驚きはなく、むしろ取り返しの付かない土壇場の段階で初めて問題が指摘されたことが、金融庁を大慌てさせることとなった。
P133
 決算見通しの修正から短期間の後に発表された決算の内容が、修正後見通しより大幅に悪化しているのを見て、UFJが進出している海外の金融当局からは一体何があったんだと、金融庁にといあわせが来た。私は海外当局へ事情を説明しながら、「UFJさん、もうちょっとしっかりしてくださいよ」と思っていた。