読書67 せいめいのはなし

せいめいのはなし 新潮社
福岡伸一
 生命は、まずDNAという設計図があって各パーツができ、それが組み立てられ、生物が完成される。これが一般のイメージですが実は違います。
 細胞は、周りの細胞と情報を交換し合い、肝臓なら肝臓の細胞としての個性をもつ。それが集まり、鳥瞰すると生命としての細緻な秩序が見えてくる。
 生命の進化を考えれば納得できます。単細胞生物が集まり、互いに情報を交換し合い、次第に多細胞化し、さらに各器官が分業化していく。お前は肝臓の細胞だ、と決められているのではない。隣の細胞を見てはじめて、じゃ、自分はこうだと個性を持つわけです。細胞同士が相互補完で協力し合い、いつのまにか高度な動物になる。
 これって、社会の色々な場面にも当てはまるよねというのが本書です。
 筆者が定義する生命とは、常に入れ替わりながらも、全体として自己、個性を維持するシステム。これを動的平衡と呼びます。
 知識も動的平衡。日々日常の知識をたえず入れ替え更新しながら、結果として専門家としての個性を確立する。
 まず専門家ありきで総論から入り、各論を当てはめていく手法は、動的平衡とは言えないそうです。つまり生きた知識として成長することはない。