量的緩和のからくり

 量的緩和論者の目標は次です。

 1.まず日銀が輪転機でカネを刷る。


         日銀BS
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  紙幣 100兆円│基金? 100兆円
 2.市中銀行より国債を買い取り

         日銀BS
  ─────────┬──────────
  国債 100兆円│基金?   100兆円
  現金  100兆円|日銀当座預金100兆円

         市中銀行BS
    ─────────┬──────────
  日銀当座預金100兆円│

 この段階では民間にカネは流れていない。これを「マネタリーベースが増加した」という。カネは増えたが民間に出回っていない状態。2000年以降の量的緩和で、すでに日本は先進国に類を見ないペースでマネタリーベースが増加している。

 3.日銀は比類のない規模で、2を行うと宣言する。


         市中銀行BS
   ─────────┬──────────
  貸付金  100兆円│
 量的緩和による将来期待によって、企業は、借入で稼ぎ、利益を預金する。銀行はそれをさらに貸し出す。
 すると銀行のBSは次のようになる。

         市中銀行BS
   ─────────┬──────────
  貸付金  100兆円│
  貸付金  100兆円|預金  100兆円
  貸付金  100兆円|預金  100兆円
  貸付金  100兆円|預金  100兆円
  貸付金  100兆円|預金  100兆円
  貸付金  100兆円|預金  100兆円
 これを「信用乗数効果」といい、日銀はこれを目指している。

 しかしこのような効果がないのは日米で証明済み。実験は終わったといってよいと思う。アメリカではこのような効果はありませんでした。

 一方、日銀のBSは次になってしまっている。


         日銀BS
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  国債 100兆円│基金? 100兆円
  国債 100兆円│基金? 100兆円
  国債 100兆円│基金? 100兆円
  国債 100兆円│基金? 100兆円
  国債 100兆円│基金? 100兆円
  国債 100兆円│基金? 100兆円
 これが限界に達すると、ハイパーインフレが起きるというのが量的緩和否定派の主張です。

 ここは本当かなと思うところです。
 カネが国外に出て行くわけではなく、多額の国債利払いも、結局受け取るのは、国内の民間ですから。ハイパーインフレはないはずです。