遺産税……2

 で、民主党の時代には、日本も遺産税に移行すべきだ、との論調がありました。
 次のような理由でしょうか。

 相続人のことを考えなくてもよくなるため、課税がシンプルになる。
 法人への遺贈なども考える必要がなくなる。
 たとえば、相法66条4項なども不要になる。


 しかし、英米には戸籍がないので遺産取得課税はそもそも採用できないのです。

 相続人の状況を考慮できる遺産取得課税の方が優れていると思います。

 もっとも、遺産税か遺産取得課税かは、国の文化や制度の歴史の結果作られるものです。
 たとえば、遺産税を採用すると債務は換価した後に課税済み財産を相続人に配分することになります。つまり、債務は相続しない、という社会の歴史が前提です。

 さらに、仮装分割を防止するために、法定相続分方式を組み合わせる現在の日
本の課税方式は、最も適した課税の仕組みだと思います。

 では、完全な遺産取得課税を採用すべきなのか。

 こちらは、仮装分割による租税回避が防げないという致命的欠陥があるのでムリ。

 また、他の相続人を無視した相続税の申告書を作成するのは不安です。
 遺産取得課税を採用したら申告もれが生じやすくなると思う。
 相続人同士の牽制効果も法定相続分方式のメリット。