個別税法の物語

 税金は、あくまで個人、法人別々に計算します。夫婦であっても100%子会社であっても、取引があれば所得税法人税は個別に計算。
 たとえば一家の所得税はその家族の所得を合計して計算する、という制度も可能ですが、日本ではそのような課税単位は採用していません。所得税相続税の整合が図れなくなるからです。
 同様に法人税も個別の法人単位で計算することが原則です。そうしないと法人間で利益の移転が発生し、租税回避が生じてしまうし、株式価値の移転を通じた個人間の財産移転も発生してしまいます。
 今年の税制改正では、100%の支配関係にある会社間に限っては、寄付・現物配当などは、無税でOKとする「グループ税制」が創設されます。法人税の観点では、グループは経済実態的には一体なんだから、資産の移転に課税しなくても良い、という思想を採用したわけですが、所得税相続税を考えると実務での取引には慎重にならざるを得ません。
 税法の基底にある「個別税法の物語」が今後どう維持されていくのか、相続税贈与税の文脈からグループ税制を考えると何が起こりうるのか、税理士にとって税法の興味は尽きません。