読書39 大発見の思考法

大発見の思考法
文春新書 山中伸弥 益川敏英
 医師としての挫折とそこから這い上がった山中教授が語る理想や夢よりも、個人的には、目の前の仕事を遊びとして楽しむ益川教授の姿勢に共感しました。
 益川教授はノーベル賞受賞を「別にうれしくない」と発言し話題になりましたが、本人によれば、受賞した研究は何十年も前に発表してから研究は次へと移り、自分にとっては過去の仕事でしかない。で、益川氏によれば仕事は遊びだそうです。
 P81
 益川 もちろん、1つのことにずっと取り組むことも美徳だと思います。でも、無駄を省いてすべてを合理性で突き詰めた生き方をしていると、いつか壁にぶつかるんじゃないかな。僕の研究室を見てもらえばわかるけど、物理の本なんて少ししかないの。一番多いのは数学の本(笑)。精神医学、天文学、色々な本が壁一杯にところ狭しと並んでます。学生時代は六法全書を持ち歩いていたこともあったし(笑)。でも、「これを物理の研究に役立ててやろう」なんて思ったことは一度もない。そんなさもしいことは考えません。いつも僕は目の前にある面白いことで遊んでいるだけなんです。
 P85
 益川 いろんなところで言っているんだけど、僕は記憶力が悪くて、たいがいのことはすぐ忘れちゃう。計算間違いもよくします。でも、かなり長い数式を暗算できるし、70頁くらいある論文の証明も頭に入っている。
 山中 どうしてそんなことができるんですか?
 益川 ちょっとした工夫ですけどね。記憶力が悪いから、間違えないよう、自分だけの公式をいくつかつくっているんです。その公式をつないでいくと、70頁ある論文の証明でも、みんな頭に入ってしまう。
 P200
 益川 (略)カンブリア大爆発(5億3,4千年前に起きた生命進化のビッグバン)のときなんて、目が三つあったり、荒唐無稽な生物がたくさん生まれた。ものすごい試行錯誤を繰り返して、ムダをそぎ落としてここまで来たわけですから、生命のDNAに刻まれた年億年分の情報や知恵というのはやはり凄いなあと思わざるを得ません。