読書43 生物学的文明論

生物学的文明論
新潮社 本川達雄
 生物によって時間の進み方は異なる。一日中動かない生物にとって、1日なんて、時間が経過していないのと同じ。逆に3ヶ月で寿命が尽きてしまうネズミが自分の一生はなんて短いのだろうとは思わないだろう。
 このことは、消費するエネルギーと比例している。ほ乳類は消費エネルギーが多く、それだけ速い時間を生きていることになる。
 人間はどうか。生きるために直接必要な食料だけでなく、石油、電気を利用した莫大なエネルギーを消費している。夜でも明るい都市、新幹線など移動手段の確保、ネット環境の整備など、これらすべては、効率化のため、言い換えると時間を短縮するためのインフラであり、そのために、日本人1人あたり、原油換算で年間四トンの膨大なエネルギーを費消している。
 夏に冷房を制限することが、エネルギーを消費しないエコな生き方だという意見は根本的に間違っている。
 現代の日本は、社会自体が、莫大なエネルギー消費する恒温動物。ここを理解していない人達が「脱原発」と騒いでいるのだと思う。
P191
 私たち日本人は、膨大な量のエネルギーを使って便利な機械を動かしています。どのくらい膨大かというと、一人あたり年間、原油換算で約四〇〇〇キログラム。凄い量です ― などと言っても,どれほどの量かぴんと来ませんね。 
 そこで、私たちが食物として食べるエネルギー量の何倍なのか言い直してみましょう。すると食べる量の四〇倍。体が使うエネルギーの四〇倍ものエネルギーを私たち一人ひとりが使っているのです。