読書メモ45 終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか

 終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか
 水野和夫 日本経済新聞出版社
 資本主義で経済成長を成し遂げるには、エネルギーがただ同然で使い放題であることが条件と説明してます。要するに資源国から資源を安く買取り、付加価値を付けて輸出する。それには資源国が成長しないことが条件。
 新興国が成長するとこの前提が崩れる。資源価格が上昇し、先進国はコストアップするから労働分配率を下げるしかなくなる。これがデフレの唯一の原因だと。
 すべての国が豊かになるのは不可能。歴史を通じて豊かさを享受できるのは、全世界の総人口の15%。85%は豊かになれない。資源を使う先進国10億人を豊かにできても、今後60億人が資源を使い放題にできるはずがない。
 その意味では、15%入りできた日本は、僥倖だった。
 そして、日本が真っ先にバブルを経験しデフレ経済となったのは、省エネ技術に優れた日本が、米国を追い越し、世界一成熟の速度が速かったから。今後欧米先進国は、日本に20年遅れてデフレに突入することになる。
 化石燃料を使い果たした現代人は未来の人達から恨まれるかも知れません。
P145
 リーマンショック後、とりわけソブリンリスクが問題視されるようになった後、GDPの二倍近い借金を抱える日本の円が買われている理由は、現在の円と現在のドルやユーロと比較しているだけでは見えてこない。日本の先行性を理解していれば、現在の欧米で起きているのは数年前の日本の姿であり、現在の日本で起きていることが数年先に欧米で起きることが分かるだろう。
P195
 金利が低いのは、その社会がそれだけ巨大な資本ストックを蓄積したからであり、その経済がシステムに最もうまく適応した証しである。いかに日本の資本ストックが巨大であるかは、主要先進国の資本係数を比較すれば一目瞭然である。
P199
 二十一世紀のグローバル化は、新興国や途上国に住む六十億人の人々が期待する豊かさや自由を実現してくれない可能性が高い。二十一世紀の現在起きているグローバル化は、エネルギーがタダ同然で無限に消費できることを前提とした十六世紀以来の近代の理念となんら変わりないのである。
P315
 世界総人口のうち豊かな生活を享受している人口の割合は、1870年以降、一世紀にわたって15%が上限になっている。資本主義が世界のすべての人を豊かにできる仕組みでないことは、理論的にも実証的にも明かである。
P344
 人類は数億年前に堆積した化石燃料を十八世紀後半の産業革命以降、わずか二世紀で消費し、IT金融工学で未来の利益を現在時点で消費した。近代とは過去の遺産を食い潰し、未来の利益を横取りしてしまったのである。
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