読書51 どうして時間は流れるのか

どうして時間は流れるのか
二間瀬敏史 PHP新書 
 自然はエントロピー増大の物理法則から逃れることはできません。
 しかし、宇宙では星が形成され、生命は進化し、社会も人間も進化する、エントロピー増大とは逆の現象が起こっているではないか。以前からのこの疑問が解消されました。
 物質も空間も、なぜ存在するのかを遡ればビッグバンからの説明が必要です。時間がなぜ流れるのかも同じです。一般相対論は時間と空間を区別しません。
 仮に素粒子が完璧に平衡状態になれば、時間は消滅してしまいます。これが寿命を終えた宇宙の最終形態(?)です。とすると時間が流れるためには平衡状態ではない偏り、つまり情報が必要です。何らかの情報が存在し、情報が変化するから時間が流れるわけです。
 情報の変化とは何か。ここで熱力学が登場する。エントロピー増大の法則です。初期宇宙が100の100乗分の1の、そのまた100乗分の1の確率で、低エントロピー状態になった。その後宇宙は膨張しながらエントロピーを増大していくことになる。
 増大の過程では、宇宙全体に「ゆらぎ」が存在するため物質はでこぼこ状態となり、星や銀河が構成された。そして太陽という低エントロピー状態が出現した。
 その後、太陽の熱がすべての生命の源となるわけです。
 つまりは、エントロピーが宇宙の膨張とともに増大していく。宇宙の膨張とは時空の膨張です。時空とは時間と空間。これこそが時間の流れの正体です。
 うん。なんとなしに分かったような気がする。
P83
 私たちの社会では、本やインターネットで情報を集めるために電力を使いますが、電力を作る際や使った際に熱が放出されます。こうして放電された熱は、高いエントロピーをもっています。そのため、一つの生命体の進化や一つの社会の進化だけを考えるとエントロピーが減少しているように見えても、地球というそれらを取り巻く環境にまで目を向けると、全体のエントロピーは必ず増大しています。