読書53 日露戦争、資金調達の戦い

日露戦争、資金調達の戦い
板谷敏彦 新潮選書
 戦争で一番重要なのは間違いなく資金調達です。しかし、日本は資金調達する前にロシアと開戦してしまった。
 そして外債発行のため政府からロンドンに派遣されたのが高橋是清です。
 当時の金融市場はヤコブ・シフなどのユダヤ資本とJPモルガンなどのアメリカ人が中心。今ほど法制は整備されておらず、まさにスタープレーヤー個人の才能と個性が割拠する時代。格下とみられる日本がどう資金調達できるか。翻弄されながらも日本も学習し、高橋は立ち回ります。
 戦況で乱高下する株価と欧米列強の評価。日本軍が勝利すれば日本国債価格は急上昇します。日本国内では高橋批判が起こる。なぜ、そんな不利な条件で外債を発行するのだと。それは国内世論との戦いでもあったのですね。
 逆の状況も生じます。連戦連勝の報道に反応せず、下落する日本公債の価格に対し上昇するロシア公債。市場は日本の戦争継続に疑義を持ち、最終敵に勝つのはロシアと判断していた。実は日本の外貨準備(金本位制なので実際は金)が底をつきかけていた。新規の国債発行は悪条件にならざるを得ない。しかしそんなことを知らない国民は高橋を非難する。
 明治も平成も同じです。このあたりは、現在の日本と既視感があります。