読書80 人種とスポーツ

人種とスポーツ 中公新書
川島浩平
 はしがきで始まる言葉がこれです。
「黒人を天性のアスリートとするイメージは、ネット上だけでなく、大学などの教育現場にもあるようだ。たとえば講義や演習で「黒人だから強い」「黒人は早い」という言葉をしばしば耳にする。その発言は人種差別になる可能性があると指摘すると、「ほめてなぜ悪い」「事実だから仕方ない」といった反論にでくわすことも少なくない」
 私もそのように思っていました。疑問に思ったこともありませんでした。
 しかし考えてみればそれは思い込みなんですね。黒人といってもアフリカ人には、遺伝学的にはアフリカ人とユーラシア人との違い以上の多様性があります。人種という分類自体が実は根拠のないものです。
 かつて黒人以外は不可能と思われたヘビー級世界チャンピオンはいまやウクライナ人が盤石の王者として君臨している。逆に持久力に欠けるとかつて言われた黒人選手がマラソンの超高速時代を先導している。
 いつ、白人の100M金メダリストが誕生しても、黒人の水泳金メダリストが誕生してもおかしくないのです。
 すべては歴史と文化で語られることであり、生得説で語るのは間違いなのだと理解できました。