前に進む税法

 実務は安全が第一。現場での失敗事例や判例や極端な節税事例を考えるのも安全な処理の射程を確認するため。

 実務を動かし税法を前に進めるのはこういった極端事例。節税事案が知れ渡るとそれを防ぐための改正が行われる。一般社団法人の節税を提案すればそれを防止するための改正が行われる。税法理屈が練り上げられ完成度を高める。もっとも近年、改正で難解になりすぎガラパゴス化している感があるが。要件が入り繰る措置法を作り、多様な別表を準備しても税理士業界と税務ソフト業界が対応してしまう。

 実務の運用で当初の趣旨を変えながら生き残る条文もある。実務の運用が制度の趣旨を方向付けていくわけだ。税法条文は社会のうねりとともに生きている。

 逆に税理士自身が納税者に厳しい処理をすることでそれが定着してしまい、そのように処理しないと否認されることになってしまうこともある。修繕費の処理などは実務家自ら積極的に資本的支出として処理する結果それが定着してしまっている面があると思う。

 まさかと思うような改正もある。実務家の想像を超える改正だ。この場合は主税局はさすがだと関心するし脱帽する。しかし、それは制度を作る側と制度の中でしか生きられない側の違いを痛感する時でもある。

 条文の不備を実務家が発見すればいつの間にか不備が改正される。その際に課税当局は条文に間違いがあったとは認めない。もっともらしい理由をつけるのは官僚の得意とするところ。表向きの改正理由に納得してたらダメだろう。語られない主税局の本音に気付いてこそ税法はさらに面白くなる。実務家は意地悪でないといけない。それには課税当局の説明で納得し、要件だけで税法を解説していたらダメ。与えられた資料や解説に納得しそれを紹介する原稿を書いて、専門家として俺は優秀だと思ってたら恥ずかしい。

 批判的な目線で税法を取り扱い、立法趣旨を実務の運用で構築する。主税局の人達に、税理士には油断のならない人が多いと緊張感をもってもらう。残念ながら税理士業界は主税局にとって飼い慣らしやすい羊の群れになってしまっていないか。税理士と国税当局が良い意味で真剣勝負できたら実務はまだまだ面白い。