読書48 砂糖の世界史

 砂糖の世界史
 川北稔 岩波ジュニア新書
 2012年は時代の転換点になる、と年頭にみなさん語ってます。
 間違いではないですが、それなら、いつだって今年こそは歴史の転換点です。昨年だってみなさんそう語ってました。500年前でもそれは同じです。
 今がどういう時代なのか、それを語るには歴史に学ぶしかない。新聞のコラムでそう断言する筆者の論が小気味良かったので、本書を読んでみました。
 イギリスがフランスと覇権を巡り戦争を繰り返したのは砂糖プランテーションを作るため。なにしろ砂糖を嫌いな人はこの世にいないので、いくらでも儲かる。砂糖生産地確保のための植民地拡大であり奴隷貿易でした。
 逆に奴隷制度がなくなったのも砂糖が原因でした。産業革命で労働者を使う資本家の立場では、砂糖プランテーション経営者は邪魔な存在です。砂糖は労働者にとり重要な栄養源。プランテーション経営者が望む保護貿易を撤廃し自由に各国から輸入できたほうが砂糖は安くなり、元気な労働者が確保できる。国内資本家はそのような権力闘争から奴隷制度撤廃の圧力をかけました。
 つまり、砂糖は歴史を動かす世界商品だったわけです。
 で、現代の世界商品といえば自動車でありIT機器ですが、それも歴史を辿れば砂糖の歴史からの連続です。砂糖から学べることは少なくない。