読書91 社長は労働法をこう使え

 社長は労働法をこう使え ダイヤモンド社
 向井蘭

 税理士として知っておくべきことが多く書いてある。

 解雇で裁判をすると最低2千万円。1〜2年分の給料で和解するのが ベスト。
 仮処分申請に3〜6ヶ月。その後判決が出るまでに1年。この間、給料を払い続ける。さらに敗訴だとこれとは別に給料の支払いを命じられる。不当利得返還請求は事実上不可能。つまり二重支払い。
 さらに高裁へと進めば給料が発生し続け、最後は結局上積みの退職金を支払うことになる。

 P49
 労働事件を扱う弁護士がこれほど少ないのは、弁護士にとってメリットが少ないからです。
 たとえば、大都市の不動産の明け渡し訴訟などでは、場合によっては何億円ものお金が動きます。借地の立退料ですら数千万円に上りますから、数百万円の報酬が得られるわけです。
 ところが、労働事件の場合、動くお金は数百万円にすぎません。しかも会社側は負ける場合がほとんどですから、負けた受けに報酬を請求するのはなかなか難しいものです。

 P62
 多くの経営者は解雇の恐ろしさを知らないように感じます。
 実際、経営者から労務トラブルの相談を受けていると、意気揚々と、
 「あんな社員、戻ってきてほしくない。最高裁まで頑張ります」
 と宣言する方が少なくありません。しかし、少なくとも二〇〇〇万円は覚悟して下さいと伝えたとたん、どんな人も真っ青になって黙り込むのです。
 裁判官もひとたび仮処分が出るとトラブルが泥沼化することを知っているので、仮処分の審理中に強く和解を勧めます。 

 P94
 日本の場合、使用者に義務づけられているのは労働組合との話し合いのテーブルにつくことだけであり、組合の要求を受け入れる義務はありません。相手の質問に答える、話がまとまるよう努力するという姿勢は求められますが、相手に譲歩する必要はないのです。