自己株式の4つの歴史

 税法における自己株式の取扱いは、次のように区分できる。それは商法・会社法に追従し、かつ、税法理論の整合を図るための歴史だった。

 ――――――13/10/1―― ―――18/4/1――――――22/10/1――――――
 … 第1時代 …|… 第2時代 …|… 第3時代 …|… 第4時代 …

(1)改正の夜明け前の「第1時代」
 会社にとっては有価証券という単なる資産の取得に過ぎず、株主にとっては譲渡所得として取り扱われたのが、平成13年までの第1時代。

(2)平成13年商法改正による金庫株解禁後の「第2時代」
 平成13年10月の法人税法の改正後は、会社にとっては有価証券という資産であり、株式を発行法人に譲渡した株主には、配当所得課税が行われる時代。

(3)会社法改正後の「第3時代」
 平成18年税制改正後は、会社にとっては資本積立金のマイナスであり、株式を発行法人に譲渡した株主には、配当所得課税が行われる時代。

(4)平成22年度税制改正後の「第4時代」
 自己株式を発行法人へ譲渡した場合、受取配当金と株式譲渡損が両建て計上される場合があった。法人株主の場合、受取配当金は益金不算入となるため、譲渡損を作出する節税手法として自己株式が利用された。具体的事例として日本IBMが、この手法を使い、連結所得をゼロにしたという事案が報道された。

 平成22年度税制改正で、100%グループ内の自己株式取引に限っては、譲渡損相当額を資本金等の額と相殺する改正が行われ、このようなスキームは実行できなくなった。同時に、100%グループ内の自己株式の取引は、株主にとっても完全に資本等取引となった第4時代では、結果として、適正時価が問題とならなくなったことを意味した。